重要なミネラルの話

2021年5月2日

ミネラル

タンパク質、炭水化物(糖質)、脂質は人間の生命維持に欠かせない三大栄養素ですが、これにビタミンとミネラルを加えると五大栄養素と呼ばれます。以前に重要なビタミンの話でビタミンの各種効果について書きましたが、このページではミネラルに付いて書いていきます。ミネラルは有機物に含まれる酸素、炭素、水素、窒素の4つを除いた生命維持に欠かせない元素の事を指します。

厚生労働省による食事摂取基準として設定されているミネラルは亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、リンの13種。鉄や銅といった金属を摂取するのは何となく体に悪そうな印象もありますが、必要な摂取量は微量ではあるものの健康維持には欠かせない物となっています。

これらのミネラルはビタミン同様に野菜や果物、豆類、肉類などから摂取する事が出来ますが、一部のビタミンのように体内で作り出す事が出来ない栄養素でもあります。特にカルシウムやマグネシウム、亜鉛は現代の日本人の多くが不足気味とも言われています。しかし逆に取り過ぎと危険な物もあり、特定のミネラルのみを大量に摂取すると重大な病気に繋がる危険があります。またミネラルウォーターは名前からしてミネラルが豊富に含まれていそうに思えますが、実際には栄養補助に役立つほどのミネラルは含まれていません。

各ミネラルの効果

ここから下は食事摂取基準になっているミネラル13種のそれぞれの役割や効果、不足した場合の症状を纏めていきます。表は厚生労働省で2020年に公開(PDF)された年齢別の1日のミネラル摂取推奨量や目安量を18歳以上から纏めた物です。推奨量の数値は左が男性で右が女性となります。また一部にある耐容上限量は、その数値内の摂取であれば過剰症によるリスクが無いと考えられる数値で、逆にこれを超える場合は過剰症のリスクが考えられます。

カルシウム

カルシウムは最も耳にする事が多いであろう有名なミネラルですが、体内に最も多く存在するミネラルでもあります。骨や歯を形成する役割以外に血液中のカルシウムには筋肉の動きや神経の伝達を助ける役割もあり、出血時の凝固作用を促す働きもあります。カルシウムが不足していると血中のカルシウム濃度を保つために骨や歯に蓄えられているカルシウムが溶け出します。この作用によりカルシウム不足は骨や歯が脆くなる原因となります。カルシウムが豊富に含まれる食品としては野菜では小松菜やゴマ、魚介類ではイワシなどの小魚やひじき、他に豆腐や牛乳、牛乳が原料のチーズやヨーグルトといった乳製品があります。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢推奨量 男性/女性 (mg)
18〜29789 (2500)/661 (2500)
30〜49738 (2500)/660 (2500)
50〜64737 (2500)/667 (2500)
65〜74769 (2500)/652 (2500)
75 以上720 (2500)/620 (2500)
カルシウムの年齢別推奨摂取量

マグネシウム

マグネシウムには体内でタンパク質の合成や神経の機能、血糖、血圧のコントロールに関わる300種類以上の酵素の働きを助ける役割があります。カルシウムと同様に多くが骨に沈着しており、不足すると骨粗鬆症や血圧の上昇、血糖代謝の低下による糖尿病といった生活習慣病のリスクを上昇させます。マグネシウムは納豆や豆腐、豆味噌、きなこなどの大豆の加工品に多く含まれておりアーモンドやピーナッツといった豆類の他にバナナやワカメ、貝類にも豊富に含まれています。

年齢推奨量 男性/女性 (mg)
18〜29340/270
30〜49370/290
50〜64370/290
65〜74350/280
75 以上320/260
マグネシウムの年齢別推奨摂取量

ナトリウム

ナトリウムは実は最も身近なミネラルで、塩(塩化ナトリウム)の約4割がナトリウムに相当します。つまり多くの人があらゆる食品で日常的に意識せず自然にナトリウムを摂取している事になります。ナトリウムは体内で水分量を調整する役割や筋肉の収縮、神経の伝達を正常に動かすのを助ける働きがあります。あらゆる食品に含まれている事から不足する事は稀ですが、大量の発汗や激しい下痢などにより一時的に不足する事があります。特に汗を多くかく夏場は熱中症対策として水分だけでなく塩分摂取が必要です。しかし現代において日本人の多くは取り過ぎが問題とされており、摂取量を減らす事が目標に定められています。下の表は食塩相当量にした数値をグラムで記載しています。

年齢推奨量 男性/女性 (g)
18〜297.5未満/6.5未満
30〜497.5未満/6.5未満
50〜647.5未満/6.5未満
65〜747.5未満/6.5未満
75 以上7.5未満/6.5未満
ナトリウム(食塩相当量)の年齢別推奨摂取量

カリウム

カリウムはナトリウムとバランスを取りながら細胞の浸透圧を調整する役割や神経伝達、心臓機能、筋肉の収縮に関わっています。余分なナトリウムの吸収を抑え尿として体外へ排泄を促す働きもあり、これにより血圧を下げる効果もあります。カリウムはバナナやリンゴ、イチゴ、ミカンといった果物に多く含まれている他、芋類やトマト、ほうれん草などの野菜にも豊富に含まれています。大量に摂取しても体外に排泄される為に過剰症になる事は本来ありませんが、腎機能が低下しているとカリウムが排泄されず血中のカリウム濃度が高くなる為、カリウムを含む食品の制限が必要となる場合があります。

年齢推奨量 男性/女性 (mg)
18〜293000/2600
30〜493000/2600
50〜643000/2600
65〜743000/2600
75 以上3000/2600
カリウムの年齢別推奨摂取量

リン

リンはカルシウムに次いで体内に多く存在するミネラルで、その内の約80%が骨や歯を構成する成分となっています。カルシウムやマグネシウムと共に骨格を構成する役割以外に細胞のエネルギーの代謝や細胞膜、DNAの構成要素となっています。リンはナトリウムと同様に様々な食品に含まれていますが、特に牛乳や乳製品、肉類や魚類、大豆に多く含まれています。ナトリウムと同様に不足する事よりも取り過ぎの方が問題となる事が多い為、厚生労働省では目安量とは別に耐容上限量の数値が設定されています。下の表のカッコ内が耐容上限量になります。

年齢目安量(耐容上限量) 男性/女性 (mg)
18〜291000 (3000)/800 (3000)
30〜491000 (3000)/800 (3000)
50〜641000 (3000)/800 (3000)
65〜741000 (3000)/800 (3000)
75 以上1000 (3000)/800 (3000)
リンの年齢別目安量と耐容上限量

鉄は赤血球を構成するヘモグロビンの成分になっており、ヘモグロビンは肺から取り込んだ酸素を細胞に運ぶ役割があります。他にも神経伝達を助ける働きや一部のホルモン合成に必要となります。体内で鉄が不足すると赤血球中のヘモグロビンが少なくなり鉄欠乏性貧血となります。また鉄には動物性食品に含まれるヘム鉄と植物性食品に含まれる非ヘム鉄があり、ヘム鉄の方が非ヘム鉄より吸収が良い特徴があります。ヘム鉄は豚や鳥のレバー、牛もも肉、しじみ、あさりに多く含まれ、非ヘム鉄ではヒジキや小松菜、大豆に多く含まれています。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢推奨量(耐容上限量) 男性/女性 (mg)
18〜297.5 (50)/10.5 (40)
30〜497.5 (50)/10.5 (40)
50〜647.5 (50)/11 (40)
65〜747.5 (50)/不明 (40)
75 以上7 (50)/不明 (40)
鉄の年齢別推奨摂取量と耐容上限量

亜鉛

亜鉛はタンパク質やDNAの合成に必要なミネラルで、新しく細胞が作られる際の新陳代謝に不可欠な栄養素となります。亜鉛は他のミネラルと違い体内に貯蔵出来ない為、毎日適量を摂取する必要があります。不足する事により味覚障害の症状が表れる他、肌荒れや抜け毛、爪が脆くなり割れやすくなります。亜鉛が多く含まれている食品としては牡蠣が有名ですが、他に煮干しやタラコ、牛肩ロース、牛もも肉、カシューナッツ、アーモンド、納豆、卵などにも含まれています。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢推奨量(耐容上限量) 男性/女性 (mg)
18〜2911 (40)/8 (35)
30〜4911 (45)/8 (35)
50〜6411 (45)/8 (35)
65〜7411 (40)/8 (35)
75 以上10 (40)/8 (30)
亜鉛の年齢別推奨摂取量と耐容上限量

銅はヘモグロビンが生成される際に必要な鉄の合成の働きを助ける役割や骨の強化、血管の強化にも関わっているミネラルです。他に活性酸素を除去する酵素の成分にもなり、動脈硬化の予防や免疫力の強化にも必要となります。また、鉄だけでなく銅が不足する事が貧血に繋がる原因になります。銅が多く含まれている食品では亜鉛同様に牡蠣があり、他に牛レバーやスルメ、ココアがあります。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢推奨量(耐容上限量) 男性/女性 (mg)
18〜290.9 (7)/0.7 (7)
30〜490.9 (7)/0.7 (7)
50〜640.9 (7)/0.7 (7)
65〜740.9 (7)/0.7 (7)
75 以上0.8 (7)/0.7 (7)
銅の年齢別推奨摂取量と耐容上限量

マンガン

マンガンは体内で合成される酵素の構成成分になる他、酵素の活性化を助ける働きがあるミネラルです。他に骨の形成や糖質、脂質、タンパク質の代謝に関わっています。穀類や豆類、茶葉他、多くの食品に含まれている上に必要量が微量である為、不足する事は殆ど無いと考えられています。マンガンを多く含む食品としては生姜や栗、干しエビ、大豆、玄米があります。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢目安量(耐容上限量) 男性/女性 (mg)
18〜294 (11)/3.5 (11)
30〜494 (11)/3.5 (11)
50〜644 (11)/3.5 (11)
65〜744 (11)/3.5 (11)
75 以上4 (11)/3.5 (11)
マンガンの年齢別目安量と耐容上限量

ヨウ素

ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成成分になるミネラルです。胎児や幼児、子供においては成長ホルモンと共に成長を促す効果があります。ヨウ素は海藻や魚介類に多く含まれている為、海藻や魚介類を多く食べる日本人で不足するのは稀ですが、世界的にはヨウ素不足により甲状腺疾患が多発しています。但し取り過ぎた場合にも甲状腺機能低下症となる場合があります。ヨウ素を多く含む食品としては昆布やワカメ、海苔、たら、アワビ、タラコがあります。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢目安量(耐容上限量) 男性/女性 (μg)
18〜29130 (3000)/130 (3000)
30〜49130 (3000)/130 (3000)
50〜64130 (3000)/130 (3000)
65〜74130 (3000)/130 (3000)
75 以上130 (3000)/130 (3000)
ヨウ素の年齢別推奨量と耐容上限量

セレン

セレンは生殖や甲状腺ホルモンの代謝、DNAの合成を助ける働きがあり、動脈硬化を進行させる過酸化脂質を分解する酵素の成分にもなります。抗酸化作用の性質を持つ事からガン予防に期待されていますが、セレンの摂取によるガン予防の効果は現在の所では信用出来るエビデンスはありません。逆に慢性的な過剰摂取により脱毛や下痢、発疹、過敏症などの症状が表れます。セレンも魚介類に多く含まれている為、日本人の食生活では不足する事は稀です。セレンを多く含む食品としてはカツオ節やウニ、マグロ、ブリ、食パンや納豆などがあります。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢目安量(耐容上限量) 男性/女性 (μg)
18〜2930 (450)/25 (350)
30〜4930 (450)/25 (350)
50〜6430 (450)/25 (350)
65〜7430 (450)/25 (350)
75 以上30 (400)/25 (350)
セレンの年齢別推奨量と耐容上限量

クロム

クロムはインスリンの働きを活性化させる効果があり糖質の代謝の他に脂質やタンパク質の代謝に関与しています。他に血中のコレステロールや中性脂肪を正常に保つ役割があります。クロムが不足すると高血糖症や糖尿、末梢神経障害を引き起こす原因となります。クロムが多く含まれる食品にはヒジキやアサリ、豚ロース、大豆、サツマイモ、ホウレンソウなどがあります。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢目安量(耐容上限量) 男性/女性 (μg)
18〜2910 (500)/10 (500)
30〜4910 (500)/10 (500)
50〜6410 (500)/10 (500)
65〜7410 (500)/10 (500)
75 以上10 (500)/10 (500)
クロムの年齢別目安量と耐容上限量

モリブデン

モリブデンは尿酸の代謝に関わる酵素や体内の有害物質を分解する酵素の成分となり、鉄の働きを促す酵素の主成分になる事から血のミネラルとも呼ばれます。モリブデンが不足する事は稀ですが、不足している場合は痛風になりやすい事が分かっており、頻脈や多呼吸を引き起こす症状が表れます。モリブデンを多く含む食品としては納豆や枝豆、豆腐といった大豆製品の他、豚レバーやゴマ、ピーナッツがあります。下の表のカッコ内は耐容上限量になります。

年齢目安量(耐容上限量) 男性/女性 (μg)
18〜2930 (600)/25 (500)
30〜4930 (600)/25 (500)
50〜6430 (600)/25 (500)
65〜7430 (600)/25 (500)
75 以上25 (600)/25 (500)
モリブデンの年齢別推奨量と耐容上限量

ミネラルの纏め

上で挙げた必須ミネラルは厚生労働省が定めた食事摂取基準の13種類の他に塩素、硫黄、コバルトを足して全部で16種類あります。塩素はナトリウムと共に食塩に含まれており硫黄は必須アミノ酸のメチオニンに、コバルトはビタミンB12の構成成分となっている事から必須ミネラルから省略されているようです。

日本人の食生活の中でカルシウム、マグネシウム、亜鉛の3つのミネラルはどの年代でも不足気味と言われています。逆に塩の成分であるナトリウムは世界基準と比較すと取り過ぎとなっています。バランスの良い食事でミネラルもバランス良くとりたいものですが、それが難しい場合はマルチミネラルのようなバランスが考慮されているサプリメントに頼るのも良いかもしれません。